【5銭札・10銭札】種類や特徴をご紹介!おすすめ買取業者はこちら

10銭札・5銭札の価値は?
主な種類や特徴を紹介!

10銭札と5銭札は、明治から昭和時代にかけて発行された紙幣です。現代社会では1円以下の額面の紙幣を使うことはできませんが、短い期間に発行された10銭札と5銭札は、貴重なものといえるでしょう。この記事では、4種類の10銭札や、日本銀行券の中でもっとも額面が小さい2種類の5銭札について紹介します。

10銭札・5銭札の種類と特徴

10銭札と5銭札について、それぞれの種類と特徴について紹介します。

明治通宝(10銭札)

明治通宝は、縦87mm横53mmの縦長の紙幣です。表面には鳳凰と竜、裏面には孔雀と千鳥などがデザインされていました。明治通報は、日本で西洋式印刷術を用いて印刷された始めての紙幣で、別名「ゲルマン札」とも呼ばれています。
これは、紙幣が印刷されたのが、ドイツのフランクフルトにあった民間工場で製造されたことに由来しています。当時のドイツの技術には「エルヘート凸版印刷」というものがあり、偽造防止に効果があると評判でした。もともとはイギリスで製造予定であった明治通宝ですが、高い技術力に期待し、ドイツで製造が開始されたのです。
明治5~20年(1872~1887年)の15年間の間に発行された明治通宝ですが、トラブルも引き起こしています。額面違いの9種類の紙幣は、すべて同じデザインであり、加えてサイズが近いものもありました。結果として、額面を変造する不正が多発しています。また、紙の材質に起因する問題にも注目してみましょう。当時使われていた羊皮紙は、湿度や気温の影響を受けやすいものでした。
したがって、高温多湿な日本では、変形や損傷が発生してしまったのです。なお、初めはドイツで製造されていた明治通宝ですが、1874年には印刷原版や印刷機が日本に引き渡され、内製化されるようになりました。

大正小額政府紙幣(10銭札)

大正小額政府紙幣の10銭札は、縦54mm横86mmの横長の紙幣です。表面には大蔵大臣印と菊花紋章、裏面には彩文模様がデザインされています。ここで、彩文模様が使われた目的に注目してみましょう。彩文模様は、複雑な幾何学模様が特徴的です。偽造防止目的で紙幣などに印刷されることが多く、機能とデザインを兼ねた技術といえるでしょう。

大正小額政府紙幣は、大正6年~昭和23年(1917~1948年)にわたり発行されました。額面は3種類ありますが、10銭札が発行されたのは、大正6年~10年の5年間のみです。当時は銀の価格が額面を超えるほど高沸したため、銀貨の発行が困難となりました。
そこで、補助通貨の不足を補う目的で、紙を材料とした政府紙幣が発行されたのです。なお、紙幣のデザインには、明治時代に発行された低額面の改造紙幣が流用されました。一部文字が変更になった部分もありますが、硬貨と同じく発行年が記入されているという点は受け継がれています。

い号券(10銭札)

い号券の10銭札は、縦51mm横106mmの横長の紙幣です。表面には「八紘一宇塔」(はっこういちうのとう)、裏面には彩文模様がデザインされています。また、桐のちらし透かしが施されていますが、はっきりと確認するのは難しいでしょう。なお、八紘一宇塔の正式名称は、八紘之基柱(あめつちのもとはしら)と言います。宮崎県の平和台公園にあるこの塔は、神武天皇の即位から2600年経過を記念して建設されました。

い号券とは、太平洋戦争中に発行された紙幣のことを指し、戦争中に金属を含む物資が不足したことから、硬貨に代わって発行されました。10銭札は、1944年(昭和19年)11月1日に発行が始まり、1953年(昭和28年)12月31日に廃止されています。また、い号券として五銭紙幣も発行されていますが、双方とも裏面のデザインが簡素であったり、記番号が省略されたりと、粗悪な作りになっています。

A号券(10銭札)

A号券の10銭札は、縦52mm横100mmの横長の紙幣で、1947年(昭和22年)9月5日に発行が始まり、1953年(昭和28年)12月31日に廃止されました。表面には鳩、裏面には国会議事堂がデザインされています。A号券とは、太平洋戦争後に発行された紙幣のことを指しますが、戦争中に発行されたものとは印象が大きく異なるといえるでしょう。特に、10銭札は、平和を象徴する鳩やローマ字を使った表記方法などが特徴的です。なお、鳩のデザインが使われていることから、A号券の10銭札は、通称「鳩10銭」とも言われています。

A号券は、戦後直後の混乱期に発行されたこともあり、粗末に作られています。たとえば、最高額面の100円を除き、すかしが入っていません。また、印刷には造幣局のほかに民間の印刷会社も使われていたため、会社ごとに完成した紙幣に違いが生じ、偽札が横行する原因となりました。

い号券(5銭札)

い号券の5銭札は、縦48mm横100mmの横長の紙幣で、10銭札と比べると、やや小ぶりであるといえるでしょう。5銭札は、昭和19~28年(1944~1953年)まで発行され、表面には馬にまたがっている楠正成像、裏面には彩文模様が描かれています。なお、5銭札は通称、楠公像5銭とも言われています。

紙幣のデザインには著名人が登場することが多いのですが、楠木正成はどういった人物なのでしょうか。楠正成は鎌倉時代の終わりから、南北朝時代にかけて活躍した武将です。生涯を通じ後醍醐天皇に忠義を尽くした楠正成は、戦略家としての手腕を発揮し、鎌倉幕府倒幕に貢献しました。しかし、最終的には倒幕に向けて共に戦った足利尊氏と決別し、尊氏軍に敗れ自害しています。天皇と味方を守るために犠牲になった楠木正成の生き様は、当時の武士たちを、大いに感動させたと言われています。

A号券(5銭札)

A号券の5銭札は、縦48mm横94mmの横長の紙幣で、日本銀行券のなかで最も寸法が小さな紙幣です。戦後になって発行されたこの紙幣は、表面には梅、裏面には彩文模様がデザインされており、通称、梅5銭とも言われています。なお、10銭札同様、戦後の混乱期に作られた5銭札は粗末な作りをしており、透かしが入っていないなどの特徴が見られます。

A号券は、戦時中に発行されたい号券よりも、柔らかなデザインであるといえるでしょう。特に、5銭札はA号券の中で唯一の新字体が使われており、表記方法も現代と同じく、左から右となっています。なお、発行されたのは1947年(昭和22年)で、1953年(昭和28年)に廃止されました。